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  • 6月30th

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    ずいぶん前の写真だ。1996年くらい。
    アーンドラ・プラデーシュ州のプッタパルティという小さな町に暮らしていたとき。
    家から歩いて30分くらいのところにあるタマリンドの林へ
    散歩するのが日課だった。

    林の木陰には、小さなクリシュナの祠。
    牛飼い、羊飼い、豚飼い…
    いろんな動物と人が涼しい影を求めて集まっていた。
    ごろりねそべり、豚と寝ていた少年が、
    カメラを持っているぼくをみて、
    家の自慢の豚を撮ってくれとおきあがった。
    豚をさわる手つきがちがう。
    牛飼いは牛を、羊飼いは羊を、
    そして豚飼いは豚を、
    ほんとうに大事に、やさしく、愛おしんでいた。

    日本には「この子は家族」と言い、
    ペットの子犬をバックに入れて持ち歩く人たちがいるが、
    ぼくはあの光景をみるたびに、どうかと思う。
    動物虐待なんじゃないか、と思う。

    影の下では、けものも、人もみな、おだやかな顔をしている。

  • 6月2nd

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    バンガロールの友だちの友だちに誘われて行った
    郊外の村グルスクール。

    音楽や演劇をやっている若者(実家はスゴイ金持ち)が集まって、
    寒村の牧場の土地を買い、トムソーヤ的な小屋や、コテージを作った。
    週末になると、仲間たちで集まって、ゆったりとした時間を過ごすのだという。

    その晩はちょうど満月だったので、フルムーンの音楽パーティーだった。
    まぶしいほどの月の光の下。火を起こして、若者たちが輪を作る。
    あちらこちらでギターや、歌う声。そして、香ばしい煙。
    その昔、日本でもヒッピー、フォークブームのころは
    こんな感じだったのかしら…。

    妙なテンションで疲れていたぼくは夜中12時を回ったころにウトウト、
    翌朝、目が覚めて、最初に飛び込んできたのがこの光景だった。
    暗いうちはわからなかった。椰子の葉や茎を編んで作った
    簡素な小屋は、絶妙に光をさえぎりつつ、
    細かな光の粒を部屋の中に取りいれていた。

    いつかカルナータカの西海岸の小さな村に、
    小屋を建てられる日がきたら、こんな小屋にしようと思った。

  • 6月1st

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    カルナータカ州、遺跡の町ハンピにて。
    あまり観光名所には行かないし、
    遺跡系名所にも興味がないのだが、
    この町のいいところは、
    ぼんやり散歩できる道がたくさんあるところだと思う。

    散歩中、日差しをさけて、岩の合間で一休み。
    岩と岩との間が美しい影を作っていた。
    丸もいいが、潔い三角というかたちも好きだ。

    インドの地理を説明するとき、手で三角形をつくって
    話するのが好きだ。

  • 5月27th

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    カルナータカ州西海岸のちいさな村カンバダコーネ。
    ぼくがインドで一番美しいと思う漁村だ。
    2006年にとあるNGOとのからみで訪れた。
    村の学校の創立者で、村の大地主のお宅に一週間お世話になった。

    木と漆喰と瓦でできた築300年の民家は、
    日本の田舎と同じ匂いがした。
    サールー(豆のスープ)と、
    パリヤ(野菜の炒め煮)とご飯という
    シンプルな料理が毎日続いたけど、
    飽きることがなかった。
    朝は、霧のたちこめるあぜ道を散歩。
    昼はいつものごはんを食べて、
    涼しい玄関の長椅子で昼寝。
    夕、ゆっくりと暮れていく浜辺をそぞろあるき。
    そんな風に過ごしていた。

    村での生活のなかで、たくさん写真をとった。
    再訪したとき、それを写真集にしてプレゼントした。
    そのとき、みなが一番釘付けになっていたのが、この写真だ。
    屋敷主人の甥っ子が言った。
    「この家が建って何百年もたつが、
    この階段にカメラを向けたのは君だけだ。
    こんなに美しい光景がわが家にあったなんて、
    ほんとうに誇らしいよ」

    昨年、またこの家に行った。
    屋敷の主人は代がわりをしていた。
    銀行のマネージャーで海外出張の多い若主人は、
    古い建物にあまり興味がなかったのだろう。
    趣ある民家部分はほとんど壊され、
    清潔で現代的な家に改築されていた。
    階段は無惨にも取り外されて、
    無骨なコンクリートで塗り固められていた。
    家は人気がなく、しんと静まり返っていた。

    この写真を見るたびに、ぼくは複雑な気持ちになる。

  • 5月26th

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    カルナータカ州北部ビジャプールにある聖廟ゴール・グムバズにて。

    中心の巨大ドーム内には、「ささやきの回廊」と名付けられた不思議な空間がある。
    直径40mをこえる丸い回廊なのに、壁ぎわの長いすに座り、耳をすますと、
    30m以上離れた真反対に座っている人の声が聞こえる。
    仕組みはよくわからないが、特別な反響の仕方をしているのだろう。
    かすかに聞こえるという感じではなく、まるで自分が座った長いすに
    透明人間が座っている話しているかのように、
    はっきりと、耳元でささやかれるのだ。

    回廊は石作りで、ひんやりひんやり。
    一日ここでじっと耳をすましていたら、世界中の声が聞こえてきそうな。