去年、『文化人類学の思考法』という本の刊行イベントがきっかけになって、京都の学術出版社、世界思想社の望月さんから「インドの美を語るフォトエッセイを書きませんか」と依頼をいただいた。世界思想社というとお堅い出版社のイメージだったけれど、もうすこしやわらかいところで「せかいしそう」という新しいWEBマガジンをはじめるから、そこに掲載してくれるのだという。
インドの話はいくらでもできるし、へんてこな写真もいろいろあるにはあるが、あちこちに書き下ろし本の原稿をおまたせしているぼくとしては、ほいほいと依頼をうけるわけにはいかない。何人もの編集者の顔が思い浮かんで、はじめはお断りしようと思っていた。しかし、「気分転換にどうですか?」と連載をすすめてくる望月さんと話しているうちに、写真メインで1000字くらいの短文ならばやれる気がしてきた。
トークイベントや書店で自分のことを話してきたが、思い出話ではなく、いま直面している問題や関心事や、思い浮かんだ風景をぱっと書きとどめておく場所があったらいい。それもぼくのひとり語りではなく、8歳の娘もまきこんで、対話のような、往復書簡のような連載はできないだろうか。企画はころころ転がり、気がついたら連載をやることになった。
「美しいってなんだろう?」というタイトルはすぐに浮かんだ。
平野甲賀さんのパートナーの公子さんが「わたしたちはどんな本も催しものも、しっくりくるタイトルが決まって、甲賀さんが字をつくれば、もうできたも同然って気になるのよ」と、言っていたのを思い出した。
ここでどんなものを書いたらいいのかはわからない。でも、序文の第0回の文章にあるように、「流れゆく雲のようにあてどもないものを書こう」と思っている。ぼくの文章に娘がどのような感想やつぶやきを寄せるかも、はじめてのことでドキドキである。
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