2014年につくった『偶然の装丁家』。
これはぼくの最初で最後の半生記です。初版から8年という月日が流れても、いまだにこの本を注文してくれる書店さん、読んでくださる読者のひと、友だちにいいよ~と薦めてくださるひと、がポツポツとあります。ほんとうにありがたいことでした。
その一方、版元晶文社では在庫切れのまま、増刷してもらえず、ついに絶版という扱いに……。読みたくても手に入らない、という声も聞くようになって、これはどうにかしないといけないなぁ、と思っていました。
そんな矢先、河出書房新社が声をかけてくれました。当初は文庫で出す案もあったのだけど、単行本で出し直すのもいいんじゃない? ということで、タイトルも装丁も変えて、新章(なんと3.5万字、書きすぎ!)を書き下ろし、あたらしい本として刊行されることになりました。
生まれ変わった本のタイトルは『本とはたらく』です。
このタイトルについて、ぼくは本書のあとがきでこのように書いています。
『本とはたらく』は文字通り、本をつくる、届けることを生業にしているぼくの物語だが、それだけではない。「本」と「はたらく」の間には、数え切れない人たちのちいさな物語がひしめきあっていて、その分母はとてつもなく大きい。あくまでも本は媒介でしかなくて、ぼくが語りたいのはいつも「人」のことだ。
生きている人も亡くなった人も、子どもも大人も、一見すると本づくりとは関係のない仕事についている人たちまで、あらゆる営みが本をつくる力になっている。デザインや本の話にとどめず、『本とはたらく』が自分たちの生活の地続きにあるんだな、と少しでも感じてもらえたらうれしい。
『偶然の装丁家』を読んだ人も、読んだことのない人も、本づくりなんて興味ない人も、みんなに読んでもらいたい一冊です。
自分でいうのもなんだけど、めっちゃおもしろい。損はさせません。三十代から四十歳までのぼくの熱がぎゅーっとつまって、文章からあふれています。たぶんもうこういうものは書けないんじゃないかな。
ちなみにあたらしい装丁では、漫画家の香山哲さんがイラストを描いてくれました。ぼくは彼の漫画『ベルリンうわの空』が大好き。まさか香山さんの描く世界に自分がはいりこめるなんて! うれしすぎます。絵のなかには、ぼくやそのまわりで生きる人達の姿も見つけられます。
かんたんですが公式サイトも公開しました。本のほうはAmbooksのオンラインストアでも取り扱いスタート。サインとポスカード付き、しばらく送料無料キャンペーン中なのでちょこっとお得です。どうぞよろしくお願いします。
『本とはたらく』
http://tamon.in/book/honto/
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