ありがたいことに『美しいってなんだろう?』を読んでくださった人たちから、推薦コメントがつぎつぎに届いています。みなさんのことばをみていると、この本はいろんな人に好いてもらえそうだな、と予感がします。

大切なのは、よく見ること。
すると、一片の花びらに、泥まみれのコケに、いつもの町の風景に、奇跡のような「いのち」が現れている。
それが、そのまま美しい。わたしたちの毎日は、そんな世界の一部だ。
ささやかで何気ないものを抱きしめると、そこに自ずと美が立ち現れる。
多聞さんとつたちゃんは、そんなことをそっと教えてくれる。
中島岳志

中島さんとは彼の代表作『中村屋のボース』(白水社)から、最新の『思いがけず利他』(ミシマ社)まで、ながい付き合いで、ずっと装丁を担当させてもらっています。
娘がまだ1、2歳のときに、家族で中島さんの札幌の家に泊めてもらったのですが、つたが犬のようにいろんな本の角をがりがり食べてしまって、みんなで大笑いした記憶があります。あのとき本を噛んでいた子が、こんなふうに文章を書いて、本になったんだよ、と親戚のお兄ちゃんに声かけるみたいに、ゲラを読んでもらいました。本書には若いころの中島さんが登場するシーンがあって、ぼくはこのページが大好きです。

モリしゃん、と飛びついてきた3歳のつたちゃん。ぐずったり、笑ったり、マントラ唱えたり、箪笥の上から飛び降りたり。つたちゃんの演じてくれた寅さんの紙芝居も、落語で一席も私にとって美しい記憶。つたちゃんは孫のような気がする。多聞さんは息子のような年なのに、なぜかお兄さんみたいな気がする。多聞さんが9歳で出会ったネパールやインド、心ふるえる父の思い出が、つたちゃんの体験とスパークして、私の子ども時代の記憶を呼び起こす。
「灰のなかにのこった悲しみは、よいわるいの物語を超えて、美となり、だれかの救いとなった」
近頃読んだ一番美しい文章です。
森まゆみ(作家)

森さんもぼくに装丁をよく頼んでくれる作家のひとりですが、個人的にも家族ぐるみでお付き合いしていて、森さんが京都に遊びに来るたび、だいたいわが家で一緒にごはんを食べます。娘が赤ん坊のころからよく遊んでくれて、うちの子たちは「京都の孫」ということになって、世界思想社の森さんの連載にもエピソードを書いてくれました。一流の作家であり、長年「谷根千」とともに町の失われゆく美しさをすくいとってきた森さんに、こんなコメントを書いてもらえて感激してます。

多聞さんのお母さんの話に、わたしの母の面影を見た。
つたちゃんの文章は子どものころのわたしを思い出させた。
読む人それぞれの人生が心に浮かぶ、鏡のような文章。涙が溢れる。
愛おしい人たちとともに、人間が憧れ続ける美しさとともに、わたしも生きていきたい。
佐々木美佳(映像作家、文筆家)

『美しいってなんだろう?』の本の1ページ目は、インドの詩人ラビンドラナート・タゴールの詩の一節からはじまります。あとがきでも少し触れたのですが、この本と佐々木美佳さん撮ったすばらしいドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』は見えない糸でつながっていて、ぼくは100年前のタゴールのことばにはげまされるようにして、この本を書きあげたのでした。観る人それぞれが、自分の姿のかけらをみつけられるのが映画『タゴール・ソングス』の魅力のひとつだったのだけど、佐々木さんが『美しいってなんだろう?』にもおなじような感情を抱いてくれたのはほんとうにうれしいことです。

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矢萩多聞の本『美しいってなんだろう?』と『本とはたらくに関するお知らせやイベントなどの情報を書き込んでいくログです。

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